menu icon
x

INOVATION STORY

PDCビット

大幅な工期短縮に貢献するPDCビットの製造技術を、
ゼロベースから日本で初めて確立

これまで日本国内で普及していなかった、長寿命&高速のPDCビット。この度、国内に競合や参考事例がないなか、独自の研究開発によってその製造技術を確立。特に国内の温泉や地熱発電の掘削現場にて、工期短縮などの大きな成果を上げることに成功した。

PDCビット

開発のきっかけ

海外にあり国内にない「PDCビット」に着目

地面などを深く掘削するために使用される工具、ビット。長年安定供給できているものの、今後に向けた期待感が弱い領域であることは課題でした。新製品に取り組むことで、ビットの可能性をもっと高めていきたい。そんな思いから、新たなチャレンジを考えた次第です。
着目したのは、日本にはなく、海外ですでに普及が進んでいた「PDCビット」。長寿命で高速、かつ熱にも強い分、高価格といった特徴があります。日本で普及していない理由は、大陸(海外)と島国(日本)の地層の違いが考えられます。当然求められるビットの性能も異なり、海外のものを使う発想はあまりなかったのかもしれません。ただし、日本では温泉や地熱発電のためにかなり深く掘削することも多くあり、ニーズは感じます。それに日本で初めての開発となれば、この製品のパイオニアとして国内市場を切り開いていける。そんな希望を抱いたプロジェクトでしたが、待ち受けていたのは超難関な試行錯誤の日々でした。

項目 トリプルコーンビット PDC
メリット デメリット メリット デメリット
性能 安価 ベアリング寿命が工具寿命 掘進速度はトリコンより早い 高価
使用経験豊富 高温で使えない 岩種が適切であれば寿命が長い 岩盤により性能が変化する
性能が良くも悪くも安定 掘削速度がPDCよりは遅い 高温で使用できる 超硬岩は苦手
超硬岩を掘削できる
岩種が違っても掘削できる
Scroll

取り組み

すべてがゼロベースの開発は、毎日が苦労の連続

「PDCビット」の開発は、まさにすべてがゼロの状態からスタートしました。形状やサイズからしても、今までにない技術をたくさん必要とすることが明らかです。しかし日本に「PDCビット」がないということは、それを作る技術も国内にないということ。そのため最初は、設計から製造や検査まで、何ひとつ参考にすることができなかったのです。
形状やサイズの他に時間や費用も考えると「PDCビット」は何個も試作ができないため、開発には3Dモデルの活用が必須でした。それを扱うために必要なCADの技術を中心に、加工機、3Dプリンターなどのノウハウを1つずつ学び、取り入れていきました。不明点があっても聞ける人がいないので、何か問題があれば都度、CADならCADの、加工機なら加工機の専門家に質問。非常にゆっくりではありますが、着実に前進させていくことはできました。

技術の確立は、頭も体も酷使した先に

「開発の後半。ようやく完成形に近い試作品が扱えるようになってからも大変でした。1つ何十キロもある試作品を、事あるごとに開発チームのメンバーが人力で運んでいたのです。前半は、いくつもの新しい技術のインプットで頭をフル回転。後半は、試作品の運搬で体を酷使。そんな開発チームにとって試練のような日々を乗り越えたおかげで、3年ほどの時を経てようやく納得できるものが完成。「PDCビット」の製造技術をゼロベースから確立するに至ったのです。

開発の成果

長寿命&高速掘削で工期を大幅短縮

ビットによる地面の掘削は、従来品であれば深くても200~300m付近でビットが寿命を迎え、交換を余儀なくされます。その交換が、実はかなりの手間なのです。例えば1000m以上の掘削現場であれば、1回ビットを交換するのに丸1日以上を要します。掘削の時間よりも交換の時間のほうが長くなることすらあるほどです。その点、長寿命であるPDCビットへの期待は大きなものがありました。
旭ダイヤの「PDCビット」を実際に使用したあるお客様からは「1000m以上連続で掘削できた」との声が。高速で掘削できることもあり、工期の大幅短縮につながったそうで、大変喜ばれました。
また、現場によっては地下の温度が200度、300度と高温になることもあります。「PDCビット」は熱に強いため従来品よりも安心して使うことができると、これまた嬉しいコメントをいただくことができました。

開発の成果

お客様の喜びのために、そして旭ダイヤの夢のために

社内の技術の発展に、お客様のメリット創出にと、多大な成果をもたらした「PDCビット」の開発プロジェクト。しかし、ここで終わったわけではありません。グローバル視点などでの販路拡大は当然のこと。それに、すべてのお客様は「もっと長寿命に」「もっと高速に」と、常によりよいものを求めます。私たちとしてもよりお客様に喜んでいただくための挑戦は、これからも継続していきたいと思います。

お客様の喜びのために-1
お客様の喜びのために-2

話は変わりますが、現在、地球の内部にあたるマントルまで掘削しようという世界的なプロジェクトが存在しています。人類が未だにマントルには到達できておらず、月に行くよりも難しいと言われるほどです。その掘削に旭ダイヤの製品が使われることは、会社としての大きな夢の1つです。「PDCビット」の開発過程、そして可能性を考えてみると……期待せずにはいられません。

製品情報はこちら

他の記事を見る

ご質問・ご相談はお気軽に
お問い合わせください